禁煙による体重の変化とその健康影響

禁煙によって体重が2〜3kg増える人が多い。しかし、禁煙が原因で禁煙後1年を超えて体重が増え続けることはほとんどない。
禁煙による体重増加に伴う循環器疾患発生リスクの上昇は、禁煙による循環器疾患発生リスクの減少効果を相殺するほど、大きなものではない。

 1985年〜94年に大阪府立成人病センターの循環器検診を受診し、観察期間中に禁煙を始めた1,403人の、禁煙前と禁煙後3ヶ月〜1年後の体重変化を調べた佐藤ら(循環科学, 18, 1998)の報告によると、禁煙後平均して1.5kgの体重増加、血清総コレステロール値7.7mg/dl、最大血圧1.5mmHg、最小血圧値2.0mmHgの有意な上昇が認められました。体重の増加量が多かった人ほど、血清総コレステロール値と血圧値の上昇が大きくみられました(図ア)。
 禁煙によって得られる虚血性心疾患発生リスクの減少効果と、禁煙後の体重増加に伴う虚血性心疾患発生リスクの上昇とを天秤にかけるため、佐藤らは、大阪府立成人病センターで経年的に循環器検診を実施している大阪の事業所勤務者のうち、1979年〜86年の検診時点で40歳〜59歳の男を対象に観察したデータを解析しました。それによると、体重が6kg以上増加した禁煙者で見られた血清総コレステロール値24.6mg/dlの上昇および最大血圧値8.7mmHgの上昇の合計によるリスクの悪化は、約24本の持続喫煙によるリスクの悪化に相当していました。このことから、禁煙後最も体重の増加する約3%の人(6kg以上の増加、図ア)を除けば、禁煙することによって虚血性心疾患になる確率が増加することは、ほとんど考慮に入れなくても良いことが示されました。

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妊婦の喫煙による胎児への影響

妊娠中に喫煙を継続すると、周産期死亡率は増加し、早産、低体重児が生まれやすくなる。

 妊娠4ヶ月までに禁煙を開始すると、周産期死亡率は非喫煙妊婦のレベルにまで低下します(図イ−1)。また、妊娠中に喫煙を継続すると、早産になる確率が高まります(図イ−2)。低体重児が生まれる確率も、妊娠3ヶ月までに禁煙することにより、低下させることができます(図イ−3)。妊娠がわかったら、すぐに禁煙することが重要です。

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副流煙の周囲の人への影響

タバコの火のついた所から上がる煙を副流煙といいます。副流煙は周囲の人の様々な健康に悪い影響を与えます。

(American Council on Science and Healthの「Environmental Tobacco Smoke: Health Risk or Health Type?」のExecutive Summaryから抜粋)
・目、鼻粘膜、呼吸器への不快な刺激を与える。
・乳児、小児には呼吸器感染症、中耳炎の発生率を増加させ、喘息や呼吸器症状を悪化させる。
・成人に対しては、喘息や肺気腫の症状を悪化させることが示唆される。
・職場、かつ/または家庭で常時副流煙にさらされている非喫煙者の肺がん発生リスクを軽度上昇させるという結果が指示される。
・喫煙者の配偶者である非喫煙者と、職場かつ/または家庭で常時副流煙にさらされている非喫煙者の心疾患発生リスクを軽度上昇させる。

 喫煙中の夫を持つ非喫煙妻の肺がん罹患リスクが、非喫煙者を夫に持つ非喫煙妻の肺がん罹患リスクに比べてどれだけ高いかを検討した37の疫学調査を対象にメタアナリシスを行ったHackshawら(BMJ, 315, 1997)の成績では、夫の副流煙による妻の過剰な肺がんリスクは24%(95%信頼区間:13-36%)でした。つまり、夫の副流煙によって妻は1.42倍肺がんを発生しやすくなるという結果です。
 図ウ−1は、平山が報告した非喫煙妻の肺がん死亡相対危険度です。夫が喫煙中の者では夫が非喫煙の者に比べてリスクが高く、そのリスクは夫の喫煙本数が増えるほど高くなっていました。また、秋葉ら(Cancer Res, 46, 1986)が広島、長崎の原爆被爆者を対象に行った症例対照研究によると、最近10年間は夫から副流煙を受けなかった(10年以上前に始まった夫の禁煙、または死別、別居、離婚等により喫煙歴のあった夫と10年以上一緒に暮らしていなかったことによる)非喫煙妻は、少なくとも最近10年間喫煙中の夫と一緒に暮らしていた非喫煙妻に比べて肺がんのリスクが小さいことが示されました(図ウ−2)。
 Kawachiら(Circulation, 95, 1997)がアメリカの36歳から61歳の喫煙歴がなく、虚血性心疾患を持たない看護婦32000人を平均9.4年観察した成績によると、職場や家庭で副流煙に曝露しない環境にいた人に比べて、副流煙にしばしばさらされていた人では1.58倍(95%信頼区間:0.93-2.68)、副流煙に常時さらされていた人では1.91倍(95%信頼区間:1.11-3.28)と虚血性心疾患の発生率が高くなりました(図ウ−3)。この高い発生率は副流煙の曝露期間に依存していませんでした。
 Kawachiらの調査を含む10のコホート調査と、8つの症例対照研究についてメタアナリシスを行ったHeら(New Engl J Med, 340, 1999)の結果では、副流煙にさらされていた非喫煙者は副流煙にさらされていなかった非喫煙者に比べて虚血性心疾患にかかるリスクがコホート調査では1.21倍(95%信頼区間:1.14-1.30)、症例対照研究では1.51倍(95%信頼区間:1.26-1.81)に増加していました。

 

 

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