がん検診アクションプラン examination

STEP3.がん検診の精度管理

がん検診の精度管理

医療の質にバラツキがあるように、がん検診の質(精度)にもバラツキがあります。バラツキを減らし、一定の質を担保するため、がん検診が正しく行なわれているかを管理することをがん検診の精度管理といいます。推奨されたがん検診が市町村において正しく実施されているか、市町村別、検診機関別に各精度管理の指標をモニタリングする必要があります。

がん検診の精度管理指標の最も基本となるのは、感度(偽陰性の指標)・特異度(偽陽性の指標)ですが、これは検診受診者ファイルと地域がん登録資料との記録照合を必要とするため、各市町村での実施は容易ではありませんが、その方法は確立しつつあります。

 

検査

感度(senseitiviey) = a / ( a + b )
特異度(specificity) = d / ( c + d )

陽性

陰性

がん

あり

なし

現在、主に用いられている精度管理指標は以下の通りです。

陽性反応的中度

がん検診の精度を評価するための指標である感度・特異度の把握が困難であるため、その次善の策として、用いられている指標。がん検診で要精検(陽性)とされた者あるいは精検受診者のうち、がんと診断された者の割合。この値は高い方が望ましく、また有病率によって左右されます。すなわち罹患率の低い集団(たとえば若年者)が受診者に占める割合が低いと、陽性反応的中度が低くなります。

要精検率

検診受診者に占める要精検者の割合。受診者の特性によりこの割合は変化するが、「許容値」や「目標値」が定められており、これらとの隔たりが大きいときには受 診者の特性が偏っていないかを確認する必要があります。偏った特性でないときには、陽性反応的中度、早期がんの割合、検診機関の精度などの確認が必要です。

要精検率=要精検者/検診受診者(%)

高すぎると・・・がんでない人にがんの疑いをかけることで、不安や精密検査による偶発症などの危険を与えることになります。

低すぎると・・・がんの見落としの危険性が高まります。
要精検率が平均値より隔たりが大きい場合にチェックするべき点は以下の2つです。

受診者の特性が要精検率に及ぼす影響

検診の精度が一定であるとすると、受診者の有病率が高くなると要精検率も高くなり、有病率が低くなると要精検率も低くなります。
たとえば、肺がん検診の場合は、若年者や非喫煙者の要精検率は高齢者や喫煙者に比べて低くなります。これは、若年者や非喫煙者が結核や感染症などの有病率が低いためです。
したがって、要精検率が平均より隔たりが大きい場合は、受診者の性・年齢構成や喫煙状況などの分布を確認する必要があります。


(2)検診の精度が要精検率に及ぼす影響

受診者の特性があまり変わらないとすれば、検診の精度をチェックする必要があります。この場合、チェックするポイントは、(a)陽性反応的中度、(b)早期がんの割合、(c)検診機関の精度です。

  1. (a)陽性反応的中度
    陽性反応的中度が低い場合は、感度が低いあるいは特異度が低いのどちらか(あるいは両方)です。要精検率が平均より高い場合は、特異度が低い可能性があります。また要精検率が平均より低い場合は、感度が低い可能性があります。そのような観点で、陽性反応的中度が高いか低いかをチェックします。
  2. (b)早期がんの割合
    がん検診の目的は、がんの発見ではなく、治癒可能な早期がんの発見です。要精検率が平均より低くても発見率が高い場合、早期がんが見落とされ、進行がんばかりが発見されている場合があります。
  3. (c)検診機関の精度
    他の検診機関と比較します。たとえば一つの検診機関が複数の市町村の検診を実施する場合は、それらの市町村の成績をあわせて評価します。

精検受診率

がん検診で要精検とされた者のうち、精密検査を受診した者の割合のこと。100%に近いほどよいです。50%程度であればほとんど検診として機能していないことを意味します。諸外国では、検診の有効性を評価するだけで公的検診の実施が検討されるのではなく、検診受診率や精検受診率が一定の値に到達するかどうかが確認された上で、公的検診として実施するかどうかが決定されています。

精検受診率が低い場合、以下のような要因が考えられます。

要精検者が実際に精検を受診していても、それを市町村が把握していなければ精検受診率は見かけ上低くなります。個人情報保護を理由に、情報提供を拒む医療機関が増えているようですが、がん検診の精度管理を目的とした情報提供は、厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」上において、本人の同意を得る必要がないものと規定されています。情報提供を拒む医療機関は、単に情報提供が面倒であるため、拒んでいる可能性もあります。市町村だけで問題が解決しない場合は、生活習慣病管理指導協議会の介入が必要であると考えられます。

精検受診率が低い場合に注意すべき点は、どの年齢階級で精検受診率が低いかを検討する必要があります。たとえば高齢者の精検受診率が低い場合、そもそも高齢者の検診受診が適切であったのかどうかを検討する必要があります。また逆に、壮年層での精検受診率が低かった場合には、重点的な精検受診勧奨が必要です。

また、精検未受診者に対しての未受診理由を把握することも重要です。たとえば地域に適切な精密検査医療機関がないから、精検受診が進まないということもありうるでしょう。
このような場合に備えて、スクリーニングの段階から精検医療機関を決めておくことも必要です。

がん発見率

検診受診者のうち、がんと診断された者の割合。低い場合には受診者の特性や検診精度、精検結果の把握漏れの可能性があります。陽性反応的中度で代用する場合もあります。

がん発見率が低い場合には、(1)受診者の特性に問題がある場合、(2)検診の精度に問題がある場合、(3)精検結果の把握に問題がある場合、の3通りが考えられます。特に検診実施規模が小さい市町村の場合は、発見がんの把握もれの影響が大きくなります。検診の目的である早期がんの発見もれは精度管理上大きな問題となるため根気強い追跡が重要となります。

これらの指標を毎年確認し、精度のよくない市町村の原因を究明し、精度の向上を図ることで、より効果的ながん検診を提供することが可能になります。

各種精度管理指標の現状と課題

平成20年度の大阪府におけるがん検診の市町村別の精度管理指標は以下の大阪府のサイトより参照できます。

また、より詳細に統計的に検証した報告は以下の厚生労働省科学研究費における研究班(がん臨床)「既存統計資料に基づくがん対策進捗の評価手法に関する実証的研究」班(主任研究者:津熊秀明)」の報告書を参照してください

標準的な精検実施・精検受診率の向上に向けて

標準的ながん検診精密検査を実施するために、国/府指定がん拠点病院を中心とした精密検査体制の構築と精密検査マニュアルの作成、配布を行い、さらに、診断困難例の国/府指定がん拠点病院への紹介体制の確立も目指す必要があります。

また、がん検診精密検査報告体制を確立するために、個人情報の取り扱いに留意しつつ、府が医療機関(主に国/府指定がん拠点病院)に対して精密検査結果報告の義務化の指導・通達を行うことにより、1 次検診機関(市町村等)が精密検査医療機関からの精密検査の受診状況および結果が漏れなく把握できる体制を構築する必要があります。

精度管理について、詳しくは国立がん研究センターがん予防・検診研究センターが作成した以下のサイトも参照してください。
がん検診マネジメント(精度管理・受診率向上対策)
http://canscreen.ncc.go.jp/management/index.html

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