素朴な疑問を解決! cancer control

総論:がん対策

Q1. がんを克服できる?

「予防可能ながんを予防し、治療可能ながんを治療しよう、そしてこれを実現する制度を。(Preventing the preventable, treating the treatable, system to make it happen」
これは、2010年8月に中国・深センで開催された国際対がん連合(UICC)の世界がん会議において、提唱されたスローガンです。

これまでのがん研究の成果により、がん化のメカニズムが明らかされ、いくつかのがんは「予防可能」となりました。
また、早期に発見し適切な治療を行うことで「治療により治癒するがん」もあります。効果的に予防・治療を行うことが可能となるような効果的な仕組を作り、がん対策に取り組めば、がんは克服できます。

このコーナーではがん対策に関するトピックを取り上げて行きます。

Q2. 予防可能ながんって?

予防可能ながんって?は、以下の図中のようなものが知られています。

予防可能ながんって?

予防可能ながんの原因の代表は、「たばこ」です。たばこを吸っている人は吸わない人と比べて、がんで死亡するリスクが男性で2.0倍、女性で1.6倍といわれています。また、もし、誰もたばこを吸わなければ、男性で39%、女性で5%のがんの罹患を予防することができます。つまり、2009年のわが国のがん死亡数(全がん)は男性で約21万人、女性で約14万人ですので、男性で約8万人、女性で約7000人が喫煙によりがんで死亡しています。これらのがん死亡数は「喫煙がなければ、避けられたがん死亡」ということになります。

避けられたがん死亡数

また、たばこの煙(副流煙)による受動喫煙により、日本国内で、年間6,800人の方が死亡していると推計されています。これは、2009年の年間の交通事故による死亡数4,914人を大きく上回っています。

死亡者数

たばこに関連するがんこそ、まさに予防できるがんの代表です。たばこ対策についてはまた次の回に詳しくご紹介します。

また、ウィルスの感染が原因となるがんもあります。

C型肝炎ウィルスの感染は肝がん発生のリスク要因です。しかし、既に、肝炎に対する効果的な治療があり、きちんと治療を行うことで肝がんの発生を防ぐことができます。(詳細は肝炎ウィルス対策の回でご紹介します)。

ヒトパピローマウィルス(HPV)は子宮頸がんの原因です。このウィルスはとてもありふれたウィルスなので、多くの人がこのウィルスに一時的に感染します。しかし、このウィルスに長期間、慢性感染している場合に、がんが非常にゆっくりとできてくるという性質がありますので、2年に一度、定期的にがん検診を受診することで、致命的ながんになることを防げます。

子宮頸がんだけでなく、定期的にがん検診を受診することで、そのがんで死亡するのを防ぐことがわかっている検診がいくつかあり、組織的に全住民に行われることが推奨されています。しかし、わが国ではまだその体制が十分とはいえません。詳細はがん検診の回でご紹介します。

また、食事の内容(塩分・脂質など)、運動不足もがんの原因の一つになりうると言われています。

がんの原因を知って、がんを予防する。これが予防できるがんを予防する第一歩となります。がんの原因とがんの部位については、厚生労働省の研究班が実施している10万人の日本人を対象とした追跡研究(コホート研究)の成果をご覧ください。http://epi.ncc.go.jp/jphc/index.html

Q3. 治療可能ながんを治療するとは?

がんの治療法は何十年もかけて進歩しています。がんの治療はがんを取り去る外科的手術が中心でしたが、現在では、薬による治療(化学療法)や放射線でがんを消す放射線治療などを用いたり、外科手術と組み合わせて治療する方法も盛んにおこなわれています。

また、早期に、がんが小さい段階で発見することで、負担の少ない治療で、がんを治すことも可能になってきました。

また、がん対策推進基本計画において、全てのがん患者さんが全国のどこにいても質の高いがん治療が受けられるように、とがん医療の均てん化を目指しています。厚生労働省により、各都道府県にがん診療連携拠点病院が認定されており、その地域におけるがん治療の中心的な役割を担っています。

医療機関を自由に選択し、保険で受診できる日本では、さまざまな医療機関でがん治療が行われています。しかし、全ての医療機関において、科学的根拠に基づいた標準的ながんの治療を受けられるとは限りません。患者やプライマリケア医が、正しい情報に基づきがん治療を受ける医療機関を選択し、がん診療連携拠点病院や、治療経験の多い(治療患者数が多い)医療機関において、適切な治療を受けることが、「治療できるがんを治療する」ことの第一歩といえます。

Q4. どうしたらそれを実現できますか?

「予防可能ながんを予防し、治療可能ながんを治療しよう、そしてこれを実現する制度を。(Prevent the preventable, treat the treatable, system to make it happen)」

これを実現するには、どうしたらよいでしょうか。下の図は2005年に、大阪府がん対策推進計画を策定する際に、当センターが提案した「10年間でがん死亡20%減少へのアクションプラン」における分野別施策の目標設定と死亡率減少効果を示す図です。

全体目標を達成するための分野別施策の目標設定と死亡減少効果

がんの統計「がんは増えている?減っている?」でもお伝えしたように、がんの年齢調整死亡率(年齢構成の違いによる影響を除去した死亡率)は年々減少傾向にあります。上記のグラフは大阪府における全がんの75歳未満の年齢調整死亡率の1990年からの動向です。この傾向に直線をあてはめてみると、75歳未満の全がん年齢調整死亡率は毎年1%程度減少しており、10年間では11.7%減少すると推計されました。「がんを知る手がかり:罹患率(りかんりつ)と死亡率」のコーナーでもご紹介したように、この死亡率の減少は、胃がんや肝がんのように、危険因子が減少していったことにより、がんになること自体が減り(罹患率も減少)、そのため、がんの死亡も減少していることの影響が大きいといわれています。この「自然に」減少する10%にさらに上乗せして、10%を対策により、減少させようという計画が、「10年間でがん死亡20%減少へのアクションプラン」に記載されています。

具体的にはWeb siteおよび項目別のがん対策のコーナーでご紹介しますが、がん対策の4つの柱で、がんの死亡率を減少させる具体的な案が書かれていいます。

  1. 1. 喫煙率の半減により1.7%減
    まず、成人喫煙率の半減(男性40%から20%、女性10%から5%へ)させることにより、10年後に全がんの死亡率を1.7%減少させることができます。そして喫煙対策のようながんの一次予防(がんにならないようにする予防)は短期的な効果は小さいのですが、中・長期的な効果は大きくなるため、20年後には3.6%の減少が見込まれます。
  2. 2. 肝炎ウィルス検診体制の充実により0.9%減
    肝がんになる原因であるC型肝炎ウィルス検診の体制を充実させ、適切な治療を最後まで行うことにより、肝がんの死亡率を6.8%、全がんの死亡率を0.9%減少させることができます。
  3. 3. 早期診断により4.3%減
    有効性が証明されているがん検診を正しく実施(精度管理を充実させる)し、効果的に早期発見を行うことで、早期がんの患者さんの割合が最も高い県のレベルを達成することにより、全がんの死亡率を4.3%減少させることができます。
  4. 4. がん医療の均てん化により2.9%減
    Q3でもお伝えしたように、大阪府における全てのがん患者が、がん診療連携拠点病院や治療件数の多い医療施設で適切ながん医療を受けることができれば、全がんの死亡率を2.9%減少させることができます。

Q5. がん対策におけるがん登録の役割とは?

上記の4つの柱がきちんと行われているか、それを評価する仕組みも重要です。がん患者の情報を登録し、分析する、地域がん登録、院内がん登録の体制を整備し、活用することで実現が可能となります。

たばこ対策がうまくいっているかを喫煙が原因のがんの罹患率・死亡率で評価することができます。がん検診が効果的に行われれば、そのがんの死亡率は減少してきます。また、がん検診の精度を管理する上でも検診受診者とがん登録との照合作業が欠かせません。また、がん登録ではがん患者さんの生存確認調査を行っているため、正確な生存率を計測することができ、地域全体のがん医療の評価を行うことができます。

がん対策におけるがん登録の役割とは

がん登録は、「がん対策の羅針盤」といわれています。どのようながんが増えていて、どのようながんが減っているのか、診断時のがんの拡がりや、生存率はどう推移しているかなどを観察し、それぞれのがん対策が効果を示しているかをがん登録資料により評価し、さらにがん対策の計画を修正し、実行していくことになります。がん登録はがん対策のサイクルに、欠かせない存在であるといえます。

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